当院で扱う心療内科系の疾患の主なものについて説明致します。
うつ病 パニック障害・広場恐怖症 強迫性障害 社会不安障害(対人恐怖) 疼痛性障害
うつ病
うつ病のスクリーニングとして最も感度の高い質問は「憂うつ感や、気分の落ち込みを感じていますか?」ですが、これだけではうつ病の診断率は57%に過ぎず、「物事に対して興味がわかない、あるいは何もしたくないですか?」という質問を加えると、診断率は90%に跳ね上がるという調査結果があります。うつ病の自己診断法の簡単な方法として「気分の落ち込み」と「物事に対する興味の喪失」の有無を確認されるとよいでしょう。
次にうつ病の症状・病因・治療などについて分りやすく説明致します。
精神症状
◆気分・感情の障害
強い憂うつ感、悲哀感、不安感、イライラ感、焦燥感、何とも言えない不快感、寂しさ、無力感など、人にとって不快と考えられる気分・感情が強くなり、逆に喜びの感情が失われます。
◆気力の減退、行動・思考の抑制
気力、やる気、意欲などが減退し、同時に、興味や関心も低下します。日ごろ面白いと思って打ち込んでいた趣味に対しても同じで、何をやっても面白くない、何もやりたくないという気持ちが支配的になります。
行動面もかなり抑制されます。日ごろ普通にできていた用事・日常作業などがとてつもなく大変なものに思えたりして、実際に作業量が落ちます。また人と会うことがとても苦痛なものになり、引きこもり勝ちになります。
思考面にも障害が生じます。「頭が働かない」「集中できない」「考えがまとまらない」「判断力が低下した」「記憶力が落ちた」という状態になり、実際に精神作業能力が低下することがあります。
◆思考内容の変化
あらゆることに悲観的になり、悪いほうへ悪いほうへと考えてしまい、何の希望も持てず、絶望感が支配します。
◆自己評価の低下
劣等感、無能力感が強くなり、自信が無くなります。また、自己嫌悪・自己否定が強くなり、常に自分が悪いと考え、自責の念、罪責感が強くなります。
身体症状
◆睡眠障害
一番多いのが夜間・早朝覚醒で、夜中に目が覚めた後なかなか眠れません。寝つきが悪い、熟眠感が無いなどもあります
◆疲労感、全身倦怠感。
◆食欲不振、吐き気、食物に味がない、便秘などの消化器症状。
◆動悸、胸部の苦悶感、頻繁な尿意、口渇、耳鳴り、冷え感などの自律神経失調症状。
◆性欲の低下
病因
正確な病因はまだ十分には分っておりませんが、幾つかの要因が重なり合って発病すると考えられます。
◆状況因
「個人・家庭に関係する出来事」
家族・近親者の死、病気・事故、家庭内不和、離婚、更年期・老化、家屋・財産などの喪失、裏切り・いじめにあうなど。
「職業に関係する出来事」
職場の困難な人間関係、自己の業績不振、左遷・退職・定年、職場の移動、不景気など。
◆性格因
うつ病になりやすい性格が考えられています。
具体的には、勤勉、良心的で、責任感が強く、仕事に正確・綿密を期し、完全癖で几帳面、要求水準が高いといった傾向があります。また、対人関係は、なるべく他者に合わせ衝突を避けようとしますし、他を攻撃するよりは自責的になる特徴があります。
◆身体因
脳血管障害や認知症、甲状腺機能低下症、がんなどの疾患によるもの。ステロイド・インターフェロン・降圧剤などの薬剤によるものが考えられます。
治療
うつ病はこころの疲労ですから、十分休養を取ることが最も大切なことと考えます。
急性期には薬物治療、落ち着いてくれば、精神療法を併用することが、再発を防ぐ手立てとして考えられます。
当院では薬物治療に抗うつ薬だけでなく、漢方を併用しております。漢方は意欲を高める作用がかなりあり、服用された方はその効果に大変驚かれます。また、発汗、動悸などの自律神経失調症状にも大変効果があります。
パニック障害・広場恐怖
症状
典型的なパニック発作では、突然に動悸や息切れ、発汗などを感じ、次第に胸が苦しくなってきます。次いで、窒息感や手足のしびれなどが出現し、苦しさは頂点に達し、「このまま死んでしまうのではないか」という強い恐怖感に襲われます。
救急車などで病院に行きますが、病院に到着するころには、症状はほぼ治まっていることも多く、検査をしても異常を認めません。
一度このような「わけのわからない発作」を経験すると「また起きるのではないか」と常に心配するようになります。これを予期不安といいます。
そして人前で発作が起きて、倒れたり、不安で変な行動をしてしまったら困ると考え、外出を控え、人ごみに入るのを控えます。発作が起きそうな時や起きた時、不安になった時に逃げることが困難なバスや電車、ましてや飛行機などには絶対に乗らなくなります。これを広場恐怖といいます。
治療
急性期には、薬物療法で治療します。選択的セロトニン再取り込み阻害薬(SSRI)や抗不安薬を用います。落ち着いてくれば、認知行動療法や森田療法などの精神療法を行います。当院では、認知行動療法にACTの技法を加えた療法を行います。
強迫性障害
症状
出かけようとする時に、電気器具のスイッチやガスの元栓が切れているか何度も何度も確認しないと気が済まないため、家を出るのに30分以上もかかってしまう。
何かに触れる度に手を洗わないと気が済まない、それも5分以上もかかるので朝から晩まで一日中手を洗っている。
このような行為が不合理であると自分では気づいていても、ある思考や行動が支配的となって制御できない病態をいいます。これは絶えず心を占め、意識的に除去しようとしてもなかなか取り除けません。
治療
薬物療法ではSSRI(前出)を用います。精神療法は認知行動療法の内、暴露反応妨害法という技法を用います。
社会不安障害(対人恐怖)
症状
人前に出るなど注目される場面で、どもってしまう、赤面してしまう、顔が引きつってしまう、頭が真っ白になって訳が分からなくなってしまう、などの症状が出て、まわりの人から軽蔑される、変な人だと思われてしまう、恥をかくのではないかと不安でしかたない。またこのような時には、動悸や手の震え、冷汗などの症状もあわせて出きます。
治療
薬物療法ではSSRI(前出)を用いますが、根治を目指すには、認知行動療法などの精神療法が必要です。
疼痛性障害
症状
頑固で激しく、苦しい痛みがあります。痛みの箇所は体中あらゆる所に発生し、内科や整形外科を受診して検査を受けますが、何処にも異常を指摘されません。
これらの痛みは身体的障害によって説明できず、心理的な要因との因果関係が推測される障害を指します。
治療
SSRI(前出)を中心とした薬物療法と、認知行動療法などの精神療法があります。