適応障害
周囲の環境にうまく適応できず、そのことがストレス因となって多彩な心身の症状が現れ、社会生活に支障が生じるまでになった状態をいいます。一般に、様々な心理社会的ストレス(環境因)によって、心身の緊張状態(ストレス状態)が生じ、それが個人の体質や素質(遺伝因)によって、各人に特有の様々なストレス反応が現れます。
ストレス反応とは一般には3種類に大別され、次の様な症状を現します。
- 身体面:発汗、動悸、肩こり、頭痛など。
- 心理面:憂うつ、悲しみ、怒りなど。
- 行動面:食事(過食)、飲酒、喫煙、買い物など。
急性ストレス障害
心的外傷体験による急性・一過性の精神障害で、解離症状などのストレスに反応した精神症状を呈します。
DSM-Ⅳによる診断基準は「外傷的なストレス因子に暴露された後1カ月以内に生じる特徴的な不安、解離及びPTSDの症状である再体験、回避、過覚醒等を最低2日間、最大4週間持続するものである」とされています。心的外傷体験とは、自分が危うく死にそうになったり、大怪我をしたりするような体験のみならず、他人のそのような状況を目撃したり、家族や親しい仲間が死んだり大怪我を負ったことを知るという体験も含まれます。
解離とは意識や人格の統一性を失った状態をさし、記憶や意識の障害が認められます。解離の具体的症状として次の様なものがあります。
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感覚・感情の鈍麻
「恐怖や怒り悲しみの感情を感じなくなる」などの症状を指します。 -
注意力の減退
「頭が真っ白になった」「ぼうっとしている」などと表現されます。 -
現実感消失
「夢の中にいるよう」と、現実に自分に起きているという感じがしない状態を指します。 -
離人症
「自分の体が自分のものでないような感じ」「自分の体から自分が抜け出して上から見下ろしている感じ」と表現されます。 -
解離性健忘
「事件の後どうやって帰ったかまったく覚えていない」「覚えているような気がするけれども出てこない」と語り、外傷体験の一部又は全部を想起出来ない状態を指します。再体験、回避、過覚醒については心的外傷後ストレス障害(PTSD)で詳述します。
心的外傷後ストレス障害(PTSD)
命の安全が脅かされるような出来事(戦争、天災、事故、犯罪、虐待など)によって強い精神的障害を受けることが原因で、著しい苦痛や生活機能の障害をもたらす状態を指します。心的外傷(トラウマ)には事故・災害時の急性の心的外傷と、児童虐待など繰り返し加えられる慢性の心的外傷があります。
PTSDでは、次の3つの中核症状として現れます。
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再体験(侵入)症状
トラウマ体験に関する記憶が、自分の意思に反して頭の中に浮かび上がったり(フラッシュバック)、悪夢として繰り返され、動悸や発汗などの身体生理反応が生じます。 -
回避・精神麻痺症状
トラウマ体験を想起させる出来事や状況を避けたり(想起刺激の回避)、体験の一部を思い出せない・感情反応が収縮するなどの精神活動の低下がみられます。 -
過覚醒症状
ちょっとした刺激にもおびえるような精神的緊張状態となったり、過剰な警戒心を抱いたりするほか、集中困難やイライラ、不眠などの症状が現れます。